サンフランシスコの我がアパートは、ダウンタウン界隈からメイソン通りの急坂を昇ったあたりにありました。
左側の入り口に赤い日よけがあるアパートです。
ケーブルカーの上がるパウエル通りひとつ西がメイソン通り。
そこで二人、赤貧の生活をしながら、対岸のバークレーにある学校に通っていました。バークレーは、60年代、ダスティン・ホフマン主演、サイモンとガーファンクルの音楽でヒットした、映画「卒業」が全編撮影されたことで有名です。
アパートの場所は所謂、Nob Hill(金持ちの丘)に到達する一歩手前の厳しい坂道の途中にある古いアパートでした。
ダウンタウンの地下鉄乗り場近くまで坂を下りたあたりは、観光客もビジネスマンも多い賑やかな街の中心地あたりで、
その近くのスライス切り売り専門のピザ屋のチーズピザが、安くて美味しくて、ポケットから二人の小銭をかき集めて、夫婦ふたりでスライス一枚買うのがご馳走で、
それを分けて食べながら一歩一歩アパートまでメイソン通りの急坂を上がったものです。
その厳しい急坂の頂上あたりは、ノブヒル(金持ちの丘)と呼ばれている界隈で、ロールスロイスで乗り付けるような超高級ホテルもあります。ど貧乏の学生には、距離的には2,3ブロック上がった先なれど、近づく事さえためらわれ、「いつか自分も」と思わせられたものです。
また、さらにその丘を越えると、サンフランシスコ湾が眼前に突然広がり、クリント・イーストウッド主演の映画「アルカトラズからの脱出」で有名になったアルカトラズ島が、前に見え、さらに進むとリラックスした海岸通りに向かいます。
そこからは、ゴールデンゲイトブリッジ、ピア39、ヨットハーバーがあり、
垂水のマリンピアあたりの海岸通り、どこか空気が似ています。
ゴールデンゲイトブリッジのかかる海峡の先は、
ノンビリした海沿いの町のあるところで、そのひとつが、サウサリートという町で、その町の丘の上の小さな教会で結婚式をしました。
結婚式などする余裕はなかったのですが、ベビーシッターのアルバイト先の若夫婦が、アジアから来ている苦学生夫婦を哀れに思ったのか、全費用をだしてくれたのです。もちろん、お客さんも披露宴もなく、教会には、神父と結婚式をする二人と、その若夫婦だけでした。
「サンフランシスコに憧れて」作曲依頼用
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「サンフランシスコに憧れて」
サンフランシスコに憧れて
若い二人は坂道の
古い出窓のビクトリアン
お金もないのに住み始め
サンフランシスコで夢を見て
ありったけの小銭出し
パウエル辺りで切り売りの
ピザを分け合い夢分ける
ダウンタウンの雑踏を
ケーブルカーで越えたなら
海風香るマリーナと
ゴールデンゲイトが夢つなぐ
あの海越えた丘の上
サウサリートの教会で
こっそり鳴らしたベルの音
指輪と笑顔が光った日
サンフランシスコに憧れて
サンフランシスコで夢を見て
サンフランシスコは今も夢
振り返らずに空見つめ
今も変わらぬメイソン通り
誰が住むやらあの部屋で
サンフランシスコに憧れて
サンフランシスコで夢を見て
サンフランシスコに憧れて
サンフランシスコは今も夢
「ローン完済まであと何年」
そして、「この世とオサラバするのも、あと?年」。
かつて、若い頃は、「カウントアップ」していたのではないですか?
「3年たったら、卒業だ!」とか、
「1年後、二人の貯金が貯まったら、結婚しようね」とか。
そりゃ、年金をもらえる年齢には届かず、 割引で電車バスに乗るには若すぎる。
若者からは、年寄り扱い。
高齢者からは、若造扱い。
いったい、俺達は何なんだ!
そんな、五十路人間達は、日々、つらく生きている。
創作活動、クリエイティブな人生。
そんなものからは、縁遠いような生活をしているオジサンの中にも、
すばらしいアーティストは存在する。
その事を、周りの誰もが、知らない。
また、自分自身も、気づいていない。
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